日本では「柔道耳」「ぎょうざ耳」、海外では「カリフラワー耳」「ボクサー耳」などとよばれることがあります。「耳が沸く」といわれることもあります。
スポーツなどで繰り返し加わる強い圧迫や摩擦などが原因で、耳の軟骨膜の血管が破れて出血し、その血液が溜まって血腫となり、耳が膨らんでいる状態です。
内出血が起こってからすぐに冷やしたり、冷やしてもおさまらない場合は医療機関で処置を受ければ、もとに戻ります(急性耳介血腫)。
しかし長期間放置することで固くなり、再発を繰り返すことでだんだんと耳介が大きくなって、血腫がこぶのように固く盛り上がり、最終的には耳が大きく変形してしまいます(慢性耳介血腫)。ここまでくると自然に治ることはありません。
<急性耳介血腫>
まだ血腫が柔らかいうちは、耳鼻科などの医療機関で処置を受けます。
■穿刺吸引(血抜き)
膨らんでいる部分に注射針を刺して、溜まった血液を抜き取ります。
何度も繰り返す場合は、開窓術といって、小さく切開して体液を排出した後、耳介の前後からガーゼなどを当てて縫合し、圧迫固定して治癒させるという治療を行ないます。
感染症や雑菌などのリスクがあるため、絶対に自分では行わず、必ず医師の治療を受けましょう。
メリット
・すぐに治療することができる
デメリット・リスク
・再発する可能性が高い
■硬化療法
腫れている部分に薬物を注入して、治療する方法です。何度かに分けて注射を行ない、少しずつ改善していきます。切開や縫合、圧迫固定などが不要で、治療後の処置もなく、再発も防げるとされ、硬化療法を取り入れるクリニックも増えています。
メリット
・切開や縫合が不要で侵襲が少ない
デメリット・リスク
・希望通りの効果が出ない場合がある
・複数回にわたって注射を受ける必要がある
<慢性耳介血腫>
放置されたことで血腫が硬くなり、耳介が変形してしまった場合は、形成外科や美容整形外科で外科治療を受けます。
■切開・除去手術
変形している耳介の前面または後面に数センチの切り込みを入れて、軟骨と血腫を除去します。
耳の前後をガーゼで挟み圧迫固定して縫合、術後1週間程度で抜糸します。
症例によっては、一度取り出した軟骨を形成してから埋め込んだり、体のほかの部位から軟骨を移植したりすることもあります。
メリット
・原因を根本から除去して、変形した耳を改善することができる
デメリット・リスク
・左右の耳の形の差が出たり、ごくわずかな瘢痕が残ったり、血腫ができる場合がある
耳介血腫の治療の手術時間・ダウンタイム・費用目安
変形が度合いや元の耳の状態、目指したい状態によって、手術時間やダウンタイム、費用等が異なります。
詳しくは担当医師にご確認ください。
・柔道、レスリング、ボクシング、ラグビー、相撲などの激しい接触があるスポーツや格闘技
・ヘルメットや枕などの摩擦
・転倒など事故による強打
・日常的に耳をかきむしるクセ
上記以外に、原因不明で自然に発症する場合もあります。
スポーツが原因の場合は、ヘッドギアなどを装着して耳を守ることで予防できます。
Q. 柔道耳の治療に健康保険は適用されますか?
A. 原因や治療法、診断によって異なるため、担当の医師にご相談ください。
Q. 柔道耳の治療後、すぐにスポーツを再開しても大丈夫でしょうか?
A. 術後は耳介血腫の原因となった刺激を取り除いた状態で過ごしましょう。
術後は特に再発しやすいので、患部を安静にしておくことが大切です。治療後もできるだけヘッドギアやサポーターをして耳を守り、再発予防しましょう。詳しくは担当の医師にご確認ください。